テプフェール『M. ヴィユ・ボワ』日本語版 (その2)
原正人 (2008/12/26)
前回、ロドルフ・テプフェールの『M. ヴィユ・ボワ』日本語版についてご紹介しましたが、その『M. ヴィユ・ボワ』が、2008年12月30日(火)のコミックマーケット75(3日目)でも販売されるそうです。会場は東京ビッグサイトの東ホール、スペースはヤ―47bとのこと。詳しくは以下の記事を参照してください。
この本を読んだ方はまだ少ないでしょうが、海外のマンガはもちろん、日本のマンガに関心を持っている人にとっても、テプフェール作品は必読です。19世紀前半に書かれたおよそ退屈そうなマンガが何で……という方、ぜひササキバラゴウさんによる「まんがをめぐる問題」というブログを最初からご覧になってください。いかにテプフェールがマンガという表現にとって決定的な仕事をしているかということがわかるはずです。
このササキバラゴウさんの「まんがをめぐる問題」と『M. ヴィユ・ボワ氏』の翻訳を出発点にして、マンガ評論家の夏目房之介さんが「夏目房之介の「で?」」で、さらに議論を展開しています。
テプフェール自身ついては、ウィキペディアの「ロドルフ・テプフェール」の項目が参考になります。
今回翻訳された『M. ヴィユ・ボワ』は、もともと1827年に描かれ仲間内で閲覧されていたものを、1837年に出版、海賊版の登場などもあって、1839年には改訂版が出版されています。今回の日本語版は1839年版を底本にしているとのこと。私たちにとって非常に幸運なことに、1827年の草稿版がインターネット上で公表されていて、簡単にアクセスできます。
Vieux Bois original version 1827 – page 01
テクストはフランス語と英語の併記。日本語で読めないのが残念ですが、『ヴィユ・ボワ氏日本語版を読んでおけば、おおよその検討はつくでしょう。1839年版にはかなりの描き足しがあり、草稿版と比較してみるのも一興です。
なお、テプフェールについては、森田直子さんの「ロドルフ・テプフェールの『版画文学』理論」という優れた論考があり(日本マンガ学会『マンガ研究』vol.9、2006年4月)、これもテプフェールと日本のマンガを考える上で非常に参考になります。あまり一般の書店では取り扱っていませんが、ジュンク堂などで入手できるかもしれません。公立の図書館などには置いてあるでしょう。森田さんはこの論考の最後で、ティエリ・グルンステンの Lignes de vie :le visage dessiné という本に言及しているのですが、この本も今年の夏に古永真一さんの手で『線が顔になるとき―バンドデシネとグラフィックアート』(人文書院)というタイトルで邦訳されています。